映画ふたりの桃源郷の話の詳細
話の詳細をしりたくない方は読み飛ばしてください
ふたりの桃源郷は、25年に渡って電気も水道も通っていない山の中で暮らす老夫婦と家族を撮ったドキュメンタリー映画です。
この映画のメインの登場人物は田中寅夫さん・フサコさん夫妻。還暦をすぎている夫婦です。
フサコさんはもう腰が曲がっていますが、元気に火をおこしたり椎茸をとってきたりしています。
山は戦後に夫婦で切り開いた、他よりも広い畑が自慢の場所です。47歳で一度山を離れて大阪に引っ越しましたが、還暦をすぎて山に戻ることにしたのです。
(画像:ふたりの桃源郷公式サイトより)
老夫婦は山で木を切り煮炊きをし、風呂を沸かしています。食べるものは畑でとれたもの。
とれたものを二人で仲良く分けあって食べています。
寝るのはバス(車)の中に置いたベッドで2人で一緒に寝ています。
二人でいけんのう、いけんのうと笑い合いながら大変な山暮らしの中でも自分たちの力で生活を作り生き生きと暮らしています。フサコさんは寅夫さんのことが大好きな様子で、二人で一緒にいることが幸せという様子。寅夫さんも同じく今の生活がとても満足という様子です。
3人の娘たちは夫婦を心配して山を下りて一緒に暮らしてほしいと言いますが、夫婦は迷惑をかけたく無いとそれを拒否します。
そんな二人にもさらに老いがやってきます。
夫の寅夫さんは入院し、フサコさんには認知症の症状が出て来始めます。
仕方なく山を下りましたが、老人ホームでは楽しみがありません。山での生き生きとした表情とは対象的にぼんやりとした表情の2人。老人ホームでただテレビをみて過ごすのでは全く楽しくない。
このままじゃ余計にぼけちゃうよ、という2人は山に再び戻ることにします。
夜は老人ホームで、昼は山で過ごすという生活を始める2人。山でお風呂に入ったり髪を切ったり。今まで通りの山での生活に笑いと活気を取り戻す2人。
しかし老いは確実に進んでいきます。体は動かなくなり夫婦だけでは山に行くことができなくなってきました。
家族は二人をサポートすることを決めました。月に1度2人を山に連れて行くことにしました。
(画像:ふたりの桃源郷公式サイトより)
体は動かなくなってきて立ち上がることも難しくなっていますがそれでも畑の草取りをする寅夫さんと、寅夫さんに松茸を探してあげるフサコさん。
娘夫婦が大阪から山のふもとに移住して山を整え、畑で作物を作ります。
老いが進んで体が動かなくなってきても山で過ごすことを望んだ寅夫さんは93歳で亡くなります。
残されたフサコさんは認知症がすすみ、だんだんと忘れてしまうことも多くなり、表情も乏しくなります。
そんなフサコさんを娘夫婦が山に連れて行きそこで一緒に過ごします。
娘は老人ホームにも足繁く通い、フサコさんの好きな童謡を歌って心のこもった世話をします。
フサコさんも寅夫さんと同じ歳の93歳で亡くなりました。
残された山を娘夫婦が引き継いでいきます。娘夫婦も老人。夫婦の姿が寅夫さんとフサコさんに重なります。
山で暮らすことと自分らしく生きるということ
ふたりの桃源郷は山で暮らす愛情いっぱいの夫婦と、その夫婦の娘たちの愛情と理解の物語だなと思いました。
作り話ではなくドキュメンタリーで夫婦が老いていくところから亡くなるまでを追ったのは本当にすごいし意味のあることだったと思います。
老いることや老いた後の暮らし方過ごし方と家族の思いが超リアルに迫ってきました。
老夫婦の体の動かなさや自分が老人になった時に子どもも老人に近づいていることとか、自分だったらどうなっているだろう、どうしているだろうということがたくさん思い浮かんできました。
夫婦の愛情だったり、家族の理解だったりと感動のポイントがありまくりのこの映画。
自分としてこの映画のテーマを書くとしたら「自分らしく生きる」ということかなと思います。
夫婦にとっての自分らしく生きることのできる場所は自分たちが作り上げた山の中の2人の生活だったんですね。山での生活は力はいるし、やることは多いしで大変ですが、それでも自分たちで生活しているという実感がある生活なんだと思います。
安全で安心な街での暮らしよりも大切なのは生きていると思える環境にいることだと思って夫婦は山に戻りましたが、自分にとってその夫婦の感覚はすごく共感できるものでした。
外にいるときに感じる「生きている」って感じ、それがある生活とない生活、一度味わってしまうと無い方には戻れないというのはキャンプ好きなら理解できるのではないでしょうか?
この映画を見て、恥ずかしいほどに単純ですが山が欲しくなりました。自分の生きがいになるような場所が欲しくなったんです。ここで死んでもいいと思える場所を持てたら人生どんなに楽しいだろうかと思います。
老体になってから山に入ったのでは体力が厳しいので、できれば早めに山を手に入れたい・・
どうやったら自分らしく生きられる場所を手に入れられるか、それが山なのかどうかはまだわかりませんがそろそろ答えをだして前に進むほうがいいかもしれないなと思っています。